早期胃がん

胃がんの患者数

わが国では肺がんや大腸がんについで頻度の高い悪性腫瘍ですが、最近のX線診断学や内視鏡診断の向上、ピロリ菌感染の除菌などにより年々、患者数(罹患数)と死亡数は減少してきています。さらに人間ドックや検診の普及により早期発見、早期治療が可能となってきたことも胃がんの死亡の減少を促していると考えられます。

しかし、減少傾向にあるものの悪性腫瘍の主な部位別がん死亡数罹患数は男性で第3位、女性で第4位を占めており、まだまだ、油断はできません(202年)。

そこで今回は、“早期胃がん”についてです。

早期胃がんと進行胃がん

胃がんは胃の粘膜の細胞ががん化して発生し、その浸潤の程度により、早期胃がんと進行胃がんに分類されています。

一般に早期胃がんは、胃の“粘膜”かその下の“粘膜下層”まででとどまる状態のもの(大まかに言えば胃粘膜の表面から浅い部分までの範囲にあるもの)を指します。一方、進行胃がんは、“固有筋層以下”のもう少し深いところまで浸潤した胃がんを指しています。

正常の粘膜(組織)では細胞がみんなキチンと同じように並んでいますが、がん細胞はわがままで、いびつな構造がたくさん見られ、早期胃がんの場合、胃の粘膜の表面に変なへこみ(陥凹)や、出っ張り(隆起)を形成します。

“がん”と聞くと何かすごい腫瘍のかたまりを考えがちですが、早期胃がんの病変は比較的小さく、初期には自覚症状がありません。でも、これがこわい!

胃がんの治療

胃がんの治療には、内視鏡あるいは手術による切除と抗がん剤による化学療法があります。最近では、遠隔転移のない早期胃がんの場合には、内視鏡による胃の粘膜の剥離(内視鏡的粘膜下層剥離術;ESD)が行われています。外科手術に比べ入院期間は短く、胃の表面のみを切除するため、お腹を開けることなく治療ができます。もちろん、胃は切除することなく残っています。

進行胃がんの場合には、手術による切除および抗がん剤による化学療法を行い、さらに、遠隔転移を伴う場合には化学療法が標準的治療として行われています。

現在、早期胃がんは約95%以上の高い生存率が得られています。しかし、進行胃がんになると経過は悪くなり、病状の進行の程度によりさらに予後は不良となります。

早め、早めに健康診断を行い、早期発見、早期治療に心がけて下さい。

早期胃がんと進行がん

早期胃がんと進行がん
早期胃がんと進行がん

胃は、大きく分けて5つの層(粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜)から出来ています。胃がんは、最も内側にある粘膜の細胞が、何らかの原因によって、がん化したものです。胃がんが内側の2層(粘膜・粘膜下層)にとどまっているものを”早期胃がん”といい、3層目(固有筋層)より深く入っているものを”進行胃がん”といいます。