新聞やテレビなどで、『インフォームドコンセント』という言葉を耳にしたことはありますか? インフォームドコンセントは、すべての医療行為を受ける前に、医師および看護師から医療行為について、わかりやすく十分な説明を受け、内容について十分納得した上で、その医療行為に同意することです。“説明と同意”と訳され、十分な説明を受け理解した上で、患者自身が同意され、最終的な治療方法を選択することです。
しかし、医者の中にも様々な人達がいます。また、患者さんにしても実に千差万別です。
『~でございます。』とやたら丁寧な患者さん、特に“長い”“くどい”“要領を得ない”と三拍子そろった場合には要注意です。
今回は、そのような患者さんの例を見てみましょう。
新しい薬を説明した時の事です。
「この薬は足のしびれをとる薬ですから明日から飲んで下さい」
と言っても、なにを思ったのか
「〇〇でございませんね」と別の薬の名前を急に言い出したりします。
こちらがあっけに取られながら
「それは血圧の高い場合に使う薬で、今回とは全く関係ありませんよ」と話をすると
「そうでございますね」「また、先生に失礼なことを聞いてしまいましたね」
「そんなことはありません。また何でも聞いてください」
「先生、ところで何の薬でございましたか」
しばらく、続きました。
また、別の患者さんに検査の説明をしたときの事です。病状も含めて本人と家族に説明したいと考えて、
「家の人はいつ来られますか?」
「先生の御都合の良い時でよろしいです」
「それでは来週の月曜日でいいですか。何時なら来られますか?」
「先生の御都合のよろしい時でしたら何時でも結構です」
「月曜日の午後3時でいいですか?」
「月曜日の午後3時ですか。もう決めてよろしいのですか。色々、先生の御都合があるといけませんが」
「何かあれば事前に連絡します。月曜日の午後3時に検査について説明します。家の方にも、また連絡しておいて下さい」
「でも、直ぐに決めてもよろしいですか。一応、第一候補、第二候補をあげて頂いてもよろしいのですが」
「来週の月曜日の午後3時でいいですよ」
一日に何度もこんな会話が続くといいかげん疲れて来ます。話しが終り、やっとの思いで病室を出ようとしたとき、
「ところで、第二候補は何時でございますか?」
遠くの方で“プチッと頭の血管の切れる音が…
実に、“て・ご・わ・い!!”
「そうですね。翌日の火曜日の同じ時間で」
患者さんにメモをお渡したところ、やっと、ホッとされました。
研修時代のちょっとした楽しい一幕でした。