痙縮の治療

名古屋セントラル病院 脳神経外科 主治医長 竹林 成典 

痙縮(けいしゅく)と拘縮(こうしゅく)

痙縮』、聞きなれない言葉だと思います。『拘縮』はよく聞きますが、痙縮は聞いたことが ない方が大多数だと思います。医療関係者でさえ同じで、痙縮について知っている医師や看護師は 少数です。

ただ、 

 1)拘縮に対する治療は難しいですが、痙縮は治療可能です。 

 2)多くの方が思っている拘縮は、実は治療可能な痙縮かもしれない。 

の2点は覚えておいてください。 

痙縮(けいしゅく)とは

痙縮は、脳や脊髄の病気やケガで麻痺が出現した後、回復する過程で生じます。具体的には、脳卒中の後遺症で図のような状態になっている方は痙縮です。


脳や脊髄の病気を発症直後は、弛緩性の麻痺となります。簡単に言うと、手足がだらんとした力が入らない状態です。数週間から数ヶ月経つと麻痺は自然に、またはリハビリテーションにより回復するのですが、少し遅れて痙縮が生じます。手足に力が入り過ぎた状態になり、せっかく麻痺から回復しているのに、次第に動かなくなります。そして、治療せずに最終的に固まってしまったのが、拘縮です。

痙縮:握りこぶし変形

図1 痙縮:握りこぶし変形

痙縮:内反尖足

図2  痙縮:内反尖足


痙縮(けいしゅく)の治療

痙縮の治療には、ボツリヌス療法バクロフェン髄注療法があります。


ボツリヌス療法は、力が入り過ぎた筋肉に直接ボツリヌス毒素を注射することで、筋肉を弛緩させます。『毒素』というと怖い治療のように感じるかもしれませんが、極めて安全な治療です。ただ、およそ3ヶ月ごとに繰り返し治療をする必要があります。


バクロフェン髄注療法は、脊髄にバクロフェンという薬を直接送り込む治療です。脊髄にカテーテルを、腹部の皮膚の下に薬を送り込むポンプを埋め込む、簡単な手術を必要とします。効果は高く、送り込む薬の量は体外から専用の機器を用いてコントロールします。

痙縮は、適切なタイミングと方法で治療することが重要です。痙縮を放置せず、拘縮になる前に治療する必要があります。

ボツリヌス療法

図3 ボツリヌス療法

バクロフェン髄注療法

図4  バクロフェン髄注療法