日本の食文化

日本の多様な食文化について

ひだまり内科クリニック 院長 伊藤 公人

現在の日本における「食文化」は実に多様で、外食産業でも中華料理、フランス料理、イタリア料理、和食など世界の食べ物のお店が軒を連ねています。さらに驚くべきことに、日本では家庭内でも「世界の料理」が食卓に並んでいるのが当たり前の風景となっています。この豊穣な食文化が育まれるまでには様々な「食の歴史」を経ているわけですが、それでは古来、日本人は一体どのような食文化をおくっていたのでしょうか。


時代は遡り、卑弥呼の時代の日本人が食べていたと考えられるのは、主食はコメのほか、コムギ、アワ、ヒエ、アズキなどでした。米は土器で煮ていたと推測されますが、弥生時代の遺跡から木製のスプーンが多数出土することからも粥のようにして食べていたとも考えられています。また副食には、野菜類や果実類といっしょにシカやイノシシなどの獣肉類、アワブ、ハマグリ、マダイ、ブリ、スズキ、マイワシ、サバなどの魚介類、クリやシイなどの堅果類などが食されていました。


中国の魏志倭人伝に「倭地温暖 冬夏食生菜 皆徒跣」という記載があり、これは日本が温暖な土地であり、夏も冬も生野菜を食べること、裸足で過ごしていたことを意味します。加えて日本人は根っからの酒好きであったとのことです。魏志倭人伝にはさらに、多くの人が80-100歳まで生きる長命国家であった」ということが記されており、平均寿命ランキング世界一の我が国の片鱗がうかがえます。


医食同源」という言葉があるように、健康を維持するためにはどのような食事を摂るかは大事なことですが、日本人は古来より「医食同源」を実践してきた民族であるといえます。現代日本の、世界でも稀有な「食の多様性」についても、もしかしたら私たちが民族レベルで無意識のうちに医食同源を実践していることの顕われではないか、と想像を膨らませつつ、多様な食文化の社会で暮らしていくことができる幸せを噛みしめながら今日もおいしく食事をいただいております。


参考文献: “食”で謎解き 日本の歴史 造事務所編 実業乃日本社