ひだまり内科クリニック 院長 伊藤 公人
新型コロナ感染症の影響で、Sakuraの会ではこれまでの講演形式から開催の形式を変更し、「患者と医療、社会をつなぐ」をテーマとしたJAPAN ART FESTIVALを開催させていただいています。新型コロナ感染症の感染拡大が社会問題となる中、人と思うように会うことができない状況の中で、人々のつながりや連携を築き上げることの困難さを感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。そのような中、今回のJAPAN ART FESTIVALでは「人と人とのつながり」がテーマとなっていますが、今回は「人と人とのつながり」は「コーリング」と「レスポンシビリティー」により成り立っているというお話です。
コーリング(calling)とは英語で「天職」を意味します。天職に就きたいと誰しもが願う中で、皆様は普段のお仕事が「天職」と実感されていますでしょうか?コーリングは、もともとはキリスト教で神から与えられた召命・使命を意味する言葉で、カルヴァン(Calvin)によれば「神から与えられた才能を人類の幸福のために用いる時に見出されるもの」です。天職を全うするためには神のコーリング(呼びかけ)にいつでもレスポンス(応答)できることが必要となります。
レスポンシビリティー(responsibility)は「(説明)責任」と訳されることが多いですが、本来の意味としては「神の呼びかけ(コーリング)に対し反応しうる(レスポンシビリティー)状態であること」を指します。「神の呼びかけに人は反応しなければならない」のです。そしてこの「呼ぶもの」と「呼ばれるもの」の関係は、私たちの周りにおけるあらゆる関係(つながり)においても相似する形で存在しています。例えば赤ちゃんが泣いたらお母さんがかけつけあやしつけるような親子の関係、先生と生徒の間の師弟の関係、そして病気になられた方を癒し治していく患者と医療関係者との関係など、私たちの生活や社会の基盤となる関係にも随所にみられるものです。
人と人とのつながりは、他者からのコーリング(呼びかけ)にいつでもレスポンスする(反応する)、聞く耳をもつことにより成り立っているわけです。あなたがもし仕事でコーリングにレスポンスしていると実感しているのであれば、きっとあなたは「天職」に就いているのです。
今回も多くの力作が出品されています。作品を通し作者のコーリングに耳を傾け、人と人のつながりを感じていただけましたでしょうか?これからも、直接は人と会うことができないという私たちにとり未曾有の状況の下であっても様々な様式や形でつながりの輪が広がっていくことを心より願っております。