尿中糖定性

基準値

(-;陰性)

解説

● 尿中糖定性は、糖尿病をはじめとする高血糖を起こす病気や、腎臓の障害により尿中に増加するグルコース(ブドウ糖)をはかる検査です。

糖分にはさまざまな種類があり、尿中に排出される糖を「尿糖」とよびます。その大部分はグルコース(ブドウ糖)という種類です。まれにフルクトース(果糖)、ガラクトース(脳糖)、ラクトース(乳糖)、ペントース(五炭糖)、サッカロース(ショ糖)などといったものがみられることもあります。


尿糖は、体の糖分を処理する機能に異常が起こったため血糖値が異常に上昇したとき(糖尿病など)、または、血糖値の上昇がなくても腎臓からの糖の排出が異常に起こりやすくなったとき(腎性糖尿)にみられ、原因によって区別されています。

健康な人では血糖値が160~180mg/dlくらいになると、尿に糖が混ざります。

ふつう、血糖値がもっとも低い早朝の空腹時にとった尿で、糖が陽性ならば異常とし、逆に血糖値がもっとも高い食後2時間ごろの尿で糖が陰性であれば正常と考えることができます。

● 注意点

この検査は、「酵素法」という検査方法で行われていますが、アスコルビン酸(ビタミンC)やL-ドーパといった成分が入ったお薬を飲んでいる患者さんでは、検査がうまくいかずに誤って陰性と判定されるおそれがあるので、注意が必要です。

陽性のときに疑う疾患

血糖値は正常でも糖尿があるとき(腎性糖尿)

腎臓の尿細管という場所でブドウ糖を吸収する機能が下がり、腎臓が糖分を排出しやすくなるためにおこります。生まれながらにみられる病気には、腎性糖尿・Fanconi(ファンコニ)症候群・Wilson(ウィルソン)病・ガラクトース血症といったものがあります。

一方で生まれた後に原因がある病気には、慢性カドミウム中毒・イタイイタイ病などがあり、尿細管の機能が低下したさいの症状のひとつとしてみられることがあります。

血糖値は正常でも糖尿があるとき(食餌性糖尿)

一時に大量の糖分(200g以上)をとったあとにみられます。手術で胃の切除を受けた患者さんに多くみられ、ダンピング症候群(脱力感、めまい、倦怠感)を伴うことが多いのが特徴です。

血糖値が高く糖尿もあるとき(糖尿病)

膵臓からインスリンとよばれるホルモンの分泌や作用が弱まるせいで、血糖値が上がりすぎて尿中にグルコースが排出されてしまうものです。

血糖値が高く糖尿もあるとき(内分泌性疾患)

膵臓以外のホルモンを分泌する臓器(甲状腺・下垂体・副腎など)の機能が異常に高まるせいで高血糖となり、尿糖が陽性のときに疑う病態と疾患です。

血糖値が高く糖尿もあるとき(神経性糖尿)

ストレスや精神的な緊張などでもみられることがあります。

血糖値が高く糖尿もあるとき(その他)

重症な肝臓の病気・ステロイドを飲んでいるとき・脳腫瘍・薬物中毒などの 一部でもみられますが、いずれも一時的なものです。

Coffee break!

● ビタミンCの落とし穴

ビタミンCには強い還元作用があります。多くの食品やサプリメントに含まれているため、ビタミンCを摂取した後に尿検査を行うとブドウ糖潜血ビリルビンが実際には陽性なのに検査では陰性(偽陰性)になることがあります。

検診前に、ビタミンCの過剰摂取には気をつけてくださいね。検査結果が、正確に出ないことががあります。