血清鉄(Fe)

基準値

男性  50~200μg/dL

女性  40~180μg/dL

解説

● 血清鉄(Fe)は、ヘモグロビンの構成に必要な物質です。貧血と診断されたとき、その原因や貧血の種類を知るために用いられています。

は赤血球に含まれるヘモグロビンというタンパク質を構成する元素です。ヘモグロビンは酸素を体中のすみずみに送り届ける役割を持っているため、鉄が不足すると体内の様々な組織が酸欠状態になってしまいます。このような貧血は「鉄欠乏性貧血」と呼ばれています。


鉄は、わたしたちの体内におよそ3~5gほど含まれており、約3分の1がフェリチンという鉄を蓄えるためのタンパク質と結びついて肝臓などの臓器に貯蔵されています。残りの約3分の2はヘモグロビンと結びついた状態で赤血球の中に存在しています。何も結合していない鉄(血清鉄)は、全体のわずか0.1%ほどとなっています。

鉄はふつう、化合物の状態で食品に含まれています。口から入った鉄の化合物は、胃液の酸により分解されて鉄の単体となり、体に吸収されていきます。そのため、胃酸の量や質が十分でない方は鉄の吸収が障害され、鉄欠乏性貧血になりやすいのです。

男性は1日におよそ1mg(1gの1,000分の1)の鉄を失います。


一方で月経のある女性は、月経のために月に約20~30mgもの鉄を失います。このため鉄の蓄えが底を尽きやすく、一般的に女性には貧血が多いといわれています。またスポーツマンでは汗の中の鉄分が失われる上、激しい運動によって血液が壊れてしまい、鉄が足りない状態に陥りやすいのです。

高値のときに疑う疾患

再生不良性貧血、巨赤芽球性貧血、鉄芽球性貧血、ヘモクロマトーシス、肝硬変 など

低値のときに疑う疾患

鉄欠乏性貧血、真性多血症、悪性腫瘍(がん)、慢性炎症性疾患 など